• 「春」の栽培と管理
  • 鉢栽培も４月に入ると遅咲きの春蘭の花も終わりに近づきます。
    花の終わった株は秋の植え替えを控えた株が多いと思います。
    順次、植え替え、株分けを行います。
    毎年、同じ株に花を咲かせるより、
    ２〜３年株作りを行い株に力を付けてから花を咲かせると力強い、
    立派な花が期待出来ます。
    株分けの際に、株作りを念頭に置いた株割りが必要です。
    肥料を多くしてラン菌根菌の活性化を図る必要があります。
    冬眠から醒めた株は、気温の上昇と共に
    葉をピンと背筋を伸ばしたように立ち上がり、
    早い株にはもう新子が顔を覗かせています。
    蘭作りで楽しみな新芽の季節になりました。
    丈夫で力のある新芽を作るには、太陽の光と温度が必要です。
    早朝の２〜３時間直射日光が当たり、その後は５０％寒冷紗一枚位の採光が良いでしょう。
    鉢土の乾燥も早く、それに合わせて灌水も多くなります。
    今の時期は、朝でも夕でも手隙の時に充分灌水します。
    ラン菌根菌に活力を与える為に、鉢穴からタップリ流れ出る位い灌水し
    通気と湿度を保ち好気生菌の活性化を図ります。
    成長期のこの時期は、灌水時にメネデール等の活力剤を散布してやるのも効果的です。
    鉢の表面が乾いたら肥料を与え、
    次の日に、肥料を洗い流す気持ちでたっぷり灌水します。
    鉢土の表面が乾いたら施肥、次の日は灌水の連続です。
    

  「肥料」（ボカシ肥料）：

  暖かさと共にラン菌根菌も活発に活動を開始します。
  根から吸収された栄養素が、光合成により蘭の生育が促進され、
  肥料効果が上がります。
  鉢の中の乾き具合を見て
  肥料を回数多くタップリ与えましょう。

  「灌水」：
  春にはたっぷり光と水を与えます。
  この時期は鉢の表土が乾いてきたら肥料を。
  肥料を与えた翌日、手隙きの時にタップリ灌水します。
  灌水の回数を多くするには如何に早く鉢中を乾かすかにあります。
  風通しを良くし、遮光ネット下での出来るだけ多く採光する事です。

  「消毒」：
  殺虫剤（カイガラ虫）の散布を行います。

  ４月の管理：＊卯月＊

  ３月中は開花調整や各所の展示会への出展や鑑賞で多忙な毎日でした。
  開花株は花を充分鑑賞したいのですが、
  花のために消費する養分を新芽に向ける為早めに花を切取ります。
  花の始末が終わりましたら、
  今年一年の作の始まりです。
  今年一年の蘭の管理計画を立てます。
  花物、柄物とでは当然管理が違います。
  花物は毎年咲かせるのではなく、
  今年開花した花株は２〜３年充分養生管理のために
  多肥管理を行い、株に木勢を付けます。
  従って
  毎年、同じ花を開花させるには同じ株を３〜４鉢は必要になりますね。
  何年も植え替えないと鉢の中は成長した根が一杯に張っています。
  鉢から抜き取る際、苦労します。
  鉢から抜き取る時は、鉢内が乾燥した頃を見計らい、
  鉢の周囲を叩きながら抜くと比較的容易です。
  その様にして抜いた株は、古木の根は殆ど皮と芯だけになり、
  鉢の中心部の通気が悪くなります。
  出来れば毎年新しい用土で植え替えを行い、
  根の状態を確認しながら栽培管理をしたいものです。
  少なくても、２年に１度は植え替えをした方が良いようです。
  芯だけになった根、黒く痛んだ根、また余り長くなった根は適当な長さに切り揃えます。
  株分けをする場合は、最低３株以上にして、１、２株の小割にしない方が良いでしょう。
  「蘭の作上げは植え替えを如何に多く出来るかだ！」と先人は言います。
  初心者は年に１度の植え替えと、春と秋に根の状態を観察する為、上砂のみ払い除き
  上砂の交換を行う事をお勧めします。
  この時、根の状態を充分観察して下さい。
  ４月に入ると陽光も強くなり気温も高くなります。
  鉢の中では、新芽も動き始めます。
  又、植物の光合成は朝、活発に行われます。
  早朝の直射光を当てて春の光を十分に採ってやりましょう。

  ５月の管理：＊皐月＊

  日照時間も長くなり爽やかな風が吹き抜け、蘭の株元から新芽が出てきます。
  朝陽を充分に採光し、光合成を促進させ新芽の成長管理に集中します。
  新芽は株元のハカマの内側から芽吹きます。
  このハカマの下部が植込み用土に隠れる様に植込まれて居るのが理想です。
  芽吹きの時期はこのハカマの周囲の湿度に注意が必要です。
  乾燥しすぎは、新芽の伸長に支障を来たします。
  逆に、水が溜まって捌けない状態では、腐敗菌に侵されズボ抜けの原因になります。
  この時期は、肥料と灌水の繰返しになります。
  施肥後の灌水は、肥料分を洗い流す心積もりで行います。
  高温時には、腐敗菌の繁殖適温です。
  特に新芽に付着した養分と湿度と温度で腐敗菌が繁殖します。
  殺菌剤を散布しズボ抜け予防に留意しましょう。
  春の植え替えを５月に入ってから行う場合は根の成長期で根の先の成長点を傷つけない様に 十分な注意が必要です。
  又、株元のハカマには新芽が出掛かっている場合が有ります。
  取り扱いに注意しないと、折角の新芽を折ってしまいます。
  バルブを掴む際は充分注意しましょう。
  新芽、新根等蘭にとっての成長期で、非常にデリケートな状態に成っています。
  チョットした不注意で新芽を傷つけたり、根の生長点を損傷して発育の阻害を招きます。
  以上の事から初心者の春の植え替えはお勧め出来ない原因の一つです。

  ６月の管理：＊水無月＊

  今月から７月は新芽の伸長期です。
  新芽の成長を観察しながら、蘭の肥培管理に精を出す時期でも有ります。
  蘭作りで新芽の成長を観察するこの一時こそ忘我に浸ってしまうのは私だけでしょうか？
  今年の新芽の色は・・
  雪白、象牙、極黄、ピンク、赤芽・・・
  出芽の色調と柄性との関係は定かでは有りませんが、
  柄物の縞物の出芽は緑の縞目を見せる場合が多く見られます。
  ピンク芽は散り斑芸？ 出芽の先端がピンクに出た場合は覆輪芸？
  あれやこれや自問自答している内に夢ばかり膨らんで時間の観念を忘れてしまいます。
  この時期、新芽の伸びが見られない株は、何等かの障害が考えられます。
  根痛み、根の病気、凝り芽等、根の異常を調べる事が大切です。
  肥料当たりで根腐れを起こしている場合が有ります。
  （ボカシ肥料が完全に熟成していない施肥に起ります。）
  腐った根は切り捨ててベンレート等の殺菌剤の希釈液に３０分以上浸して消毒し、
  その後、陰干ししてから植込みます。
  当分、施肥を控える等の対策が必要です。
  湿度、気温も高くなってきます。
  遮光ネットでの遮光の増強が必要です。
  梅雨入りに備えて殺虫消毒を行いましょう。
  カイガラ虫を一匹でも目にしたらすぐに殺虫消毒をしましょう。
  一匹、目に付く事は、目に付かない他にも発生している事が充分考えられます。
  カイガラ虫は葉液を吸う為、蘭を弱らせますし、葉を傷めます。
  葉の表面だけでなく、裏面、葉元を充分散布します。
  ４〜５日後に再度散布して充分防除に努めます。
  成長の盛んな季節です。
  肥培、灌水共、先月に引続き充分与えましょう。
  6月下旬から7月にかけて花芽の分化期と言われています。
  開花を期待する株の水切りを行い、
  刺激を与えて、花芽の分化を促進させます。
  日中の強い陽光と気温の上昇する下旬頃からの晴天時の灌水は
  日が暮れてからにします。
  
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• 「夏」の栽培と管理
  朝明けるのが早くなり、
  早朝、蘭を見回るのも楽しみな季節になりました。
  成長する蘭の新芽を毎日見ては、柄物の柄の出具合に一喜一憂したり、
  花物の新芽のボヤ斑を楽しんだり・・・・
  蘭舎の中では時間の感覚を忘れてしまい、
  今日の予定への身支度も忘れてしまいます。
  梅雨の末期は激しい風雨と晴天の高温とで、
  強風に因る窓の閉切り等で、
  蘭舎の換気を惰ると蘭を蒸らしてしまう危険が有ります。
  蘭舎の換気には充分な配慮が必要です。
  さて、
  梅雨明け後は真夏日の栽培環境をいかに涼しく整えるかが肝心です。
  蘭舎の窓などは全部取払い完全に開放し風通しを良くします。
  風通しの悪い環境では、換気扇、扇風機等での送風が必要でしょう。
  春は少し強めの採光を行いましたが、
  これからは、遮光を充分にして、真夏の強光と高温から蘭を守りましょう。
  蘭舎内の温度は３０度以下に抑えたいものです。
  花物は８月下旬頃から、花芽が出来初めるそうです。
  花芽の分化が始まるのは６月下旬頃と言われています。
  花芽分化を促進するために、あらかじめ梅雨明け頃に水切りをして
  刺激を与えて花芽を付けさせると良いと言う人もいます。
  旨く花芽が付くと９月下旬頃に花芽が土を切って顔を出してきます。
  色花は、土を切って花芽が出る前にキャップ等で遮光します。
  今日まで元気に育った新芽が突然根元が黒くなり、手でそっと引くとズボ、っと
  抜けてしまうズボ抜けが多発します。
  新芽の葉の根元に水が溜り、そこに栄養分があるとある種のカビが発生し腐敗します。
  腐敗菌は適度な温度と水分と養分が関係しているようです。
  予防方法として
  ラン菌根菌を活性化し耐生株を作る事です。
  腐敗菌は弱酸性環境に多発するようです。
  SF混合培養土は、弱アルカリ性環境を維持します。
  潅水は前日の日没に行うのが基本ですが、
  潅水した後、新芽の根本の水分をティシュ等で拭き取ると予防出来ると言う人もいます。
  ズボ抜けは、せっかく伸び出した新芽を失うばかりでなく、
  株元では前年のバルブにも伝染し株全体を失う事になります。
  ズボ抜けが有ったら、鉢から抜き患部及び隣接株を取除き充分消毒等の処置を
  完全に施しましょう。

  「肥料」：

  施肥は控えます。
  真夏は鉢の乾燥も激しく、灌水頻度も多くなります。
  鉢中が十分に乾かない内に真夏の高温に見舞われますと、
  株元の肥料分に高温適性雑菌が繁殖します。
  出来るだけ雑菌繁殖の養分になる肥料は控えるが肝要です。

  「灌水」：

  真夏の高温で鉢中の乾燥も激しさを増します。
  夕刻陽が落ちてから鉢中の温度を下げる事と空気を充分置換する気持ちで
  充分灌水します。
  梅雨明け頃から花芽分化が始まります。
  開花を予定する株には花芽分化を促進させる為の水切りが必要になります。
  開花予定株は採光を少し強目にし、通常灌水の２回に１回か、３回に１回の灌水にします。
  

  「消毒」：

  害虫の発生に配慮します。

  ７月の管理：＊文月＊
  梅雨も終わる頃、天候も不安定になり気温の上下も激しく、
  長雨が続いたり、豪雨に見舞われたり、
  湿度の高い日が続き、病害虫の発生も心配されます。
  この時期は、通風を良くし、通風が悪いと気温が上がった時に
  湿度が高いだけに鉢内が蒸れて、新芽を傷めたり、
  親木にも大きなダメージを与える事になります。
  何よりも通気を第一に考えます。
  朝日だけが直射し、雨避けが出来て、風通しの良い木陰等が在れば
  戸外での栽培も理想的です。
  作場は風通しと遮光で温度の上昇を抑える事が大切です。
  遮光は、ダイオネットや寒冷紗を重ねたり、ヨシズで周囲を囲い
  日中の強い光を遮る努力が必要です。
  灌水は昼間の熱気をも流してしまう様に夕日が落ちてからタップリ遣ります。
  柄物の斑柄が決まります。
  柄物の出芽は一般にピンクに染まったハカマに包まれて出ます。
  この新芽の色、柄が其のまま今年の斑柄に決まります。
  柄物好きには一段と観察に力が入ります。
  芽先のピンクの染まり具合、筋の入りかた等見逃せないのです。
  覆輪芸は一般に出芽の先がピンクです。
  色合いが濃いほど覆輪も大きく深く出るようです。
  しかし、これも品種や諸条件で狂いが出て、
  期待を嘲笑うように思いと違う柄が出たり、
  余り期待していない新芽から思いも掛けない最良柄が出たり、
  捕らえどころの無い一喜一憂の複雑さこそ、
  春蘭愛好者の最も惹かれる魅力でも有るように思います。
  春蘭の花色を鮮やかに咲かせるには、花芽が付いた時点からの
  完全遮光が必要な株も有ります。
  夏の強い陽光と気温が花芽に葉緑素を蓄積させます。
  花芽の小さ時期に、細かい上砂を厚く掛けたり、
  水苔で株元を覆って花芽の遮光を行います。

  ８月の管理＊葉月＊

  例年、立秋を過ぎた頃から３５度を超える日々が続きます。
  立秋が過ぎれば表現は残暑と言う事になりますが、
  蘭舎の室温も４０度近くになる事も有ります。
  暑さに負けて夏、作を休んでしまう蘭も有ります。
  根下ろしが悪かったり、新芽の成長が遅れたり、
  そんな芽は成長し切らず一作が終わってしまいます。
  成長の良い蘭はむしろこの暑さが好ましくぐんぐん大きくなり、
  早々と成木になります。
  花物の花芽分化も済んで
  8月中旬頃から、上砂の下では花芽が膨らみ始めます。
  一般に色花は、土を切って顔を出す前にキャップ処置をする事が大切です。
  キャップは通常、アルミホイルで筒を作り花芽に被せますが、
  黒い和紙をアルミホイル筒に内張りして使う人も居ります。
  和紙の内張りは花芽に適度の湿度を持たせる事が出来ます。
  キャップの裾は基本的には砂に埋め込み完全な遮光を施します。
  品種によっては、花芽の付き初めに土を掘り返しキャップをして、
  完全遮光を施す事が必要な場合も有ります。
  品種、作場によっては、裾を少し開けて開花させる場合も有ります。
  赤花、朱金、黄花、白花は、遮光時期を誤らないよう注意が必要です。
  別項、赤花の発色方法を参照して下さい。

  ９月の管理：＊長月＊

  残暑、台風、長雨の対策が必要な時期です。
  ９月はまだまだ残暑の厳しい季節ですが、徐々に気温も下がり一作の締めくくりの季節でも有ります。
  猛暑を防ぐ為に重ねていた遮光材も気温の低下とともに、徐々に薄くして採光を採り入れます。
  夏場に控え気味だった肥料の施肥で新木とバルブの充実を計ります。
  未だ、日中の気温は高くなります。
  灌水は陽が沈んでからにします。
  台風の時期です、台風の予報に注意し備えが必要です。
  台風の強風で遮光ネットを飛ばされて、
  台風一過の晴天で葉焼けをさせてしまったと言う失敗談も有ります。

  花芽の管理
  花芽が上砂を破って出てきます。
  更に上砂を厚くしたり、水苔で覆って花芽の遮光をします。
  花芽が上砂を破って表面に出て来てからでは遅すぎます。
  時折、上砂を取除き花芽の確認をします。
  一般的な遮光は
  花芽が確認出来たらキャップをしてキャップの裾は上砂で植込み完全遮光をします。
  花芽も採光によって葉緑素を持ちます。
  それが、開花した時、花弁の濁りとなります。
  初秋の完全遮光が赤花の色を冴えさせます。
  色花の花色を美しく澄んだ色を出すには、花芽に葉緑素を作らない事が大切です。
  其の為、花芽キャップは完全遮光が必要となります。
  葉緑素は高温と光合成で生成されます。
  特に太陽の熱と光が強い真夏から初秋の時期の遮光が大切になります。
  花芽を出来るだけ早い時期に見つけてのキャップが良花の条件です。
  キャップは普通はアルミホイルで作成が簡単で作業も容易ですが、
  熱の伝導と水分の発散に不十分です。
  黒い和紙でのキャップが最良でしょう。
  ９月の下旬からは植え替えを行いましょう。
  

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• 秋の栽培と管理
  今年の新木もほぼ仕上がりの時期に入ります。
  バルブを充実させて来年の出芽のために準備を整えます。
  花芽の付いている株はより美しい花を咲かせるように花芽管理をします。

  「灌水」：
  日中何時でもよい。
  手隙の時に潅水します。
  酷暑の真夏より気温が下がった分、鉢中の乾燥も激しくありません。
  当然、灌水間隔も長くなります。
  この時期の灌水過多は葉を徒長させます。

  「肥料」：
  バルブの充実期です。施肥に心がけます。

  「消毒」：
  カイガラ虫除去の殺虫剤の散布を行います。

  １０月の管理：＊神無月＊

  気温も低くなってきます。
  少々強い採光でも葉を傷める事が無くなりました。
  夏の遮光からのため重ねたネット等を取除き、
  遮光ネットを薄くし葉の元まで採光して下さい。
  パルブの充実には採光による光合成が必要です。
  早朝から採光出来る環境なら、午前中は直射日光で採光したいものです。
  施肥管理で丈夫な根と花芽を作ります。
  涼しくなり、空気も乾燥してきます。
  鉢の上砂はすぐ乾きますが、鉢内の乾きは遅くなります。
  灌水の間隔に注意しましょう。
  過度の灌水は根を傷めると共に葉の徒長にも繋がります。
  秋は
  植え替えの好期でも有ります。
  春の芽出しから一作の出来上がった所での植え替えになります。
  但し、花芽の付いた株の植え替えは出来るだけ控えましょう。
  花芽を傷つけたり、花芽がイジケて開花しない事も有ります。
  春の花の開花後に植え替えるが賢明でしょう。
  植え替えをした株は作上がりが良いようです。
  出来れば毎年植え替えを行った方が良さそうです。
  鉢内の用土は肥料や農薬を吸収して濃縮した状態に成っています。
  古い用土で冬を越して、夏場の高温で有害ガスや腐敗菌類の増殖で新芽を傷めたり 多様な病気の発生原因に成るのは明白です。

  １１月の管理：＊霜月＊

  １１月に入ると気温も低くなり、今年の蘭の成長も殆ど終わります。
  来春の新芽のためバルブに養分を蓄積させる事です。
  ８月〜９月に掛けて新芽の出た物は未だ成木には成っていませんが、 その後の成長は来年の春を待って再び伸び始めます。
  陽光もかなり弱くなって来ます。
  朝の内は出来るだけ直射での採光を採るようにします。
  秋の陽はバルブを太らせると言います。
  充分陽光を浴びて、養分を蓄積し来春の出芽の準備をするようです。
  外気の乾燥と共に植込み用土の乾燥も表面の乾燥に比べて
  鉢内は気温も低く其れほどの乾燥では有りません。
  灌水の間隔を十分に取って過湿には注意しましょう。
  これからの季節は太平洋側と日本海側、東北地方と自ずと栽培管理も違います。
  防寒対策、寒風対策が必要になります。
  植え替えは１年中何時でも可能ですが、
  初心者は、春と秋の気候の良い時期に行うのが良いでしょう。
  秋の植え替えも１１月下旬迄としたいものです。
  花芽もだいぶ膨らんで来ます。
  キャップも少し大き目の余裕を持たせたものと交換が必要です。

  １２月の管理：＊師走＊

  花芽管理
  夏の終わりにキャップで遮光した花芽はかなり大きくなって来ています。
  大体は１月末迄、キャップをしますが、品種に依っては下旬にキャップを取外す必要があります。
  冬の寒さに当て、低い温度で採光させる事で花色が冴えます。
  赤花系や紫花等は早めにキャップを外して、朝の直射での採光をします。
  キャップの外すタイミングは種類や各々の作場環境で相違します。
  経験で体得して行く他は無いのです。
  日本列島は南北に長く連なっています。
  北と南とでは寒暖の差も大きく、日照時間も随分違いがあります。
  各地での栽培管理も相違点が多いと思われます。
  私の栽培管理は関東地方の太平洋岸での気象環境です。
  ごく初歩的な栽培管理を取上げています。
  幾らかでも参考になれば幸いです。
  各地の気象条件等で取捨選択し夫々に合った栽培管理を確立される事を祈念しております。
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• 冬の栽培と管理
  新春を迎え、
  春蘭の栽培に今年一年の一計を案じて居られる事でしょう。
  毎年、新年に蘭の一覧表を作り夫々に今年の作の思いを込めて書き込んだりします。
  ３月に入ると春蘭の開花の季節です。
  いよいよ去年からの蘭の作具合が決まります。
  蘭作りも人生同様、順風万帆とばかりは行きません。
  失敗も多く挫折感に打ち沈む事も有ります。
  今年こそは上作をと毎年、臨んだ新春でしたが、
  皆さんの作上がり具合は如何でしょうか？
  

  [肥料]：

  肥料は一切与えません。

  [灌水]：

  蘭の生理活動も緩慢です。
  従って、根からの吸収も余り必要ではありません。
  鉢内の水分は気温の低下で根の凍結による障害を考慮しなくてはなりません。
  出来るだけ曇天の日を選んで、
  午前中の暖かい時に灌水を終え、夕方迄には鉢の表土に水気が無くなる様だと理想的です。
  開花株には既に花芽が伸びています。
  花芽には水滴が掛からない様に充分な注意が必要です。
  もし、不注意で水が掛かってしまったらティッシュペーパー等で水分を取り除きましょう。
  花芽に水滴を残して夜間放置すると蕾が凍傷を起こし褐変し枯れてしまいます。

  「消毒」：

  蘭の生理活動が緩慢です。
  従って、葉面による吸収活動も停滞しています。
  カイガラ虫除去にマシン油の散布が有効です。

  １月の管理：＊睦月＊

  １月は比較的作業の少ない月です。
  冷気と寒風対策が主作業です。
  １月、２月は夜間の気温がマイナスになる日も多くあります。
  春蘭は寒さには良く絶える植物ですが、
  マイナスの気温が何日も続く異常寒波の時は暖房も必要でしょう。
  出来れば最低気温は２度以上は保ちたいものです。
  皆さんも栽培環境で温度管理に工夫しておられると思います。
  冷気と寒風対策で、
  温室等を密閉にしておくと、日中の晴天で室内温度が上昇する事が有ります。
  天気の良い日中は閉切った蘭舎の窓を少し開け室内の換気を取りましょう。
  蘭舎内の最高温度は３０度以下に調整したいものです。
  春蘭の色花は開花前の採光で決まります。
  花芽の遮光キャップの取り外しタイミングで、
  発色の良否が決まります。
  蘭舎も休眠用に対策を施した蘭舎と採光出来る開花用の栽培場所が必要です。
  発色の良い品種、万寿、東源等は１月初旬にキャップを取り採光させます。
  採光場所は、風が吹き抜けない、しかも日中温度が上がらない場所を選びます。
  赤花の発色にはキャップを取除き外気の寒さに慣らしながらの採光が発色の秘訣です。

  「中国蘭」

  
  一茎一花系の食い出しが始まります。
  素心系でも老文団素等、白色を際立たせたい花は、食い出しと共に、
  薄暗く、温度の上がらない場所で開花させると、緑色を押さえた、
  透明感の有る、清楚な感じの花を咲かせる事が出来ます。
  楊氏素、玉梅素、富岡素等、
  緑色を強調し、白色との対比を楽しみたい場合は、
  低温で採光させ光合成させると良いでしょう。
  他の中国蘭も採光を調節し開花に備えます。

  ２月の管理：＊如月＊

  節分、立春と暦の上ではもう春ですが、
  低温時の管理については引続き１月と同様です。
  花芽も伸長し蕾も豊饒となり、早い花芽は下旬には開花します。
  開花間近の花芽の急激な温度変化は禁物です。
  従って、鉢の異動には細心の注意が必要です。
  今月は、花色の発色に力を入れましょう。
  開花予定の２〜３週間前に湿度を高くし開花調整室に取込みます。
  温度も少し高目にして花茎を伸ばします。
  花茎が伸びれば採光し花色を濃くさせます。

  「赤花系」

  紅明、朱鷺、紅梅仙、女雛等は２月中旬にキャップを取り気温の低い環境で採光させます。
  春蘭の発色は、一般に
  一、に遮光。二、に採光のタイミングで色調が決まります。
  早い時期でのキャップの除去は太陽光による光合成でクロロフィルが活性化し、
  濁った赤色を呈します。
  逆に遅すぎると、生気の無いボケた花色に成ってしまいます。
  蕾が食い出したら、徐々に直射日光にさらします。
  あまり、長時間の採光を避け、朝日から午前中が適当です。
  採光が長すぎると花弁に濁りが出ます。
  極紅、天紅香、柿右衛門等は比較的色の出難いタイプです。
  ２月初旬頃キャップを除去しての早めの採光が必要です。
  何度か実際に咲かせてみて品種、作場による採光時期を把握しておく必要があります。
  開花株以外は未だ休眠栽培を続けます。
  赤花の花色は寒い冷気の中で光を浴びると発色が良さそうです。
  灌水は蕾に水滴が付かないよう最大の注意が必要です。

  「黄花系」

  黄花系の色素はフラボノイド系です。
  やはり、赤花系同様キャップによる遮光と、
  採光による、葉緑素とフラボノイド色素の生成バランスが良花の条件です。
  キャップを早く取外すと緑色の花になってしまう話を良く聞きます。
  これは元々、黄色い色素フラボノイドが無い、一般にモヤシ花に多く見れれます。
  この系統は、食い出しが始まっても、キャップは取外しません。
  徐々に温度を２５度〜３０度に上げます。
  湿度も充分に与え、採光は採りません。
  開花間際にキャップを外し、短時間採光します。
  花弁が淡黄色味を帯びた
  俗に言う「モヤシ花」が出来上がります。
  花茎が真白く、細長く伸びすぎの感があります。
  全体に弱々しく感じます。
  花弁にホンノリ黄色味が乗りますが、日が経つにつれやがて緑になります。

  「紫花系」

  赤花系の管理に準じます。
  紫花の色素はアントシアニン色素です。
  太陽光に当てるほど色素は増産されます。
  茄子の色素も同じアントシアニンです。
  夏の太陽で濃い紫色に染まりますが、太陽光を遮るヘタの部分は染色しません。
  春蘭の花の場合、キャップ等で調整しないと同時に葉緑素も増産され、
  花色としては、くすんだ紫色に咲きます。
  赤花同様、葉緑素の生成を抑えたキャップによる開花調整が必要です。

  「素心系」

  日本春蘭は舌の白さと花弁の濃緑との対比を重んじる傾向があります。
  通常はキャップをせず、採光します。
  力強い緑弁と舌の白さとの対比を楽しむ咲かせ方です。
  俗に、白花と呼ばれる花弁も白く咲かせるにはキャップを使用します。
  温度上昇を押さえた採光が締まった素心花として好まれます。

  「中国蘭」

  中旬頃から、一茎一花が開花します。
  特有の清々しい香りが蘭舎を満たします。

  ３月の管理：＊弥生＊

  初旬は未だ寒い日もありますが、徐々に暖かくなり、
  いよいよ開花の月に入りました。
  花茎の良く伸びた見ごたえの有る花にするには、
  充分な湿度と冷気が必要ですが、
  休眠用の遮光を取除き、５０％遮光の採光に切替えます。
  湿度を保つために密閉した事に因る蒸れには充分注意しす。
  蘭舎の窓を開放し春の風を取り入れましょう。
  蘭の生育の基本はラン菌根菌の活性化と光合成ですが、
  菌の活性と光合成は温度が２２〜２８度が適温の様です。
  春蘭は寒さに強く厳冬の間も葉の緑は衰えませんが、
  春の光を受けると光合成で一段と葉艶が生き生きしてきます。
  ３月下旬までは未だ休眠から覚めたばかりで、
  新根、新芽は充分な活動期に入っていません。
  肥料は控えめが良いでしょう。
  消毒には、
  カルホス、スプラサイト等の殺虫剤を散布します。
  これらの説明書を良く読んで倍率など誤りの無いよう注意しましょう。
  開花株は既に採光して居ます。
  花を充分観察し、花色と形、舌点と形、花軸の色等観察記録を執り、
  早めに花茎を切り取り、活力を新芽に向けてやります。
  観察記録は、開花までの経過も纏めておきたいものです。
  特に、気象状態、室温、キャップの取り付け、取り外し等次回の
  開花管理に重要な資料となります。
  ３月も下旬頃より、施肥管理を始めますが、希釈濃度に充分な配慮が必要です。
  

  「朱金系」

  福の光、多摩の夕映え等のキャップの除去は蕾が食い出す（包皮が開く）寸前とし、
  キャップを取ったら、徐々に午前中一杯太陽の直射に晒します。
  採光を採るとともに室温も上げて一気に開花させます。
  福の光は朱金花と言うより紅色に近く、発色良く咲くと紅花と見紛う見事な発色を見せます。
  春蘭は、花色と花茎の調和です。
  花茎を伸ばすには湿度が必要です。
  頻繁な霧吹き、鉢回りの打ち水や、入浴後の浴室を利用する等
  其の為の色々工夫が必要です。
  花が咲き始めて、咲き終わるまでのこの２ヶ月間は蘭の栽培の集大成です。
  充分気持ちを込めて、仕上げに打込みましょう。
  冬季休眠栽培で遮光を厚くし、蘭舎の目張りをしていると日中高温に見舞われます。
  温室の天窓を少し開けて急な高温に注意しましょう。
  
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