第18回パフィオサロン in ろまんちっく村
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テーマ「haynaldianum & lowii」のまとめ(協力:花房 英美)
テーマ 『haynaldianum & lowii』 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1. 原種の紹介(歴史・分布・分類) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
1. 原種の紹介 1.1 haynaldianum(ハイナルディアナム)は1870年にフィリピンのルソン島で発見され、1874年に記載された。自生地はフィリピン(北部のルソン島)であり、海抜1400mの切り立った崖の腐葉土層もしくは岩に根を張っている。また時に着生しているという報告もある。気候は6月〜9月終わりまでモンスーンの影響を受けるので温度・湿度ともに高く、降水量も多い。冬の間も湿度は高く、降水量も多いが温度は氷点下近くまで下がる。 花容は一見するとlowiiに似ているが、ドーサル・スポットの大きさ・スタミノードをよく見ればその区別は容易である。特にhaynaldianumのスタミノードは明黄緑色でlowiiのそれとは明らかに違うことが分かる。またドーサルの地色が白でドーサルにスポットが入ることもhaynaldianumの大きな特徴である。変異体としてhaynaldianum forma albumが知られているが現在流通しているものは恐らく全て‘Charles Edward’FCC/AOSのselfと思われる。 1.2 lowii(ローウィー)は1846年にSarawak(サラワク)で発見され、翌1847年に記載された。分布はとても広くマレー半島・スマトラ・ジャワ・ボルネオ・スラウェシ(セレベス)全域であり、ポリアンサ亜属中でももっとも分布の広い種である。またlowiiはパフィオペディラム属の中でも数少ない着生種の1つであり、日当たりが良く、風通しの良い川辺近くに自生している。気候はモンスーンの影響を受ける夏の間は日中30℃を超え夜でも20℃以上になる。冬は夏より乾燥しており夜温は12℃まで落ち込む。 花容はhaynaldianumと似ているが、lowiiのドーサルにはスポットが無くペタルのスポットもより小さくスタミノードも色・形が明らかに違うのでその区別は容易である。またlowiiはその広い分布にもかかわらず意外にも個体差のない種であるが、変異個体としてlowii forma aureum、変種としてlowii var. lynniae、とても酷似した種としてrichardianumの記載がある。lowii forma aureumはPhillip Cribb氏の本『The Genus PAPHIOPEDILIM(Second Edition)』の185ページに写真がある。lowii var. lynniaeは1997年に記載されたが分布等不明である。一方richardianumはスラウェシ島で1987年に発見された個体を元に、1988年に記載された。花はlowiiを小さくしペタルがより下に垂れている感じであるが、細かく見ればスタミノード等にも違いを見ることが出来る。なおrichardianumは分類学者によりlowiiの変種として扱われることもあるが、RHSは独立した種として扱っている。 |
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2.交配結果 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
haynaldianumとlowiiは花がとてもよく似ているが、同じPolyantha亜属でありながら交配結果に大きな差があり、かなりかけ離れた種、と言える。すなわちlowiiはrothschildianumと同じようにいかにもPolyantha亜属らしい結果になるのに対してhaynaldianumはPolyantha亜属らしくなくどちらかと言うとesquirolei(個人的にはparishii)に近い感じである。 交配相手を亜属ごとに分けて考察する。 2・1 haynaldianumとlowii x Parvisepalum(パービセパラム)亜属
意外にもlowiiの交配登録が無いことに気づくが、Polyantha亜属らしい交配結果になることが分かっているので少ないのかも・・・。片親がPolyantha亜属のhaynaldianumとlowiiなので色彩はは交配相手であるParvisepalumの持つ色が強調される。形も遺伝力の強いParvisepalumに近くなるが総じてPolyantha
X Parvisepalumの一般的な形になる。 2・2 haynaldianumとlowii x Brachypetalum(ブラキペタラム)亜属
交配相手がBrachypetalumの場合もlowiiの交配登録が少なくスライド写真もlowiiのほうが少なかった。ここで特に興味深いのはhaynaldianum X niveumでは、本物のniveumを使ったなら白っぽい花が咲くはずであり、ang-thongを使ったらピンクの花が咲くという話があった。この時のhaynaldianumはアルバ(album)個体ではなく普通個体を使うのであるがniveumとの共通色が無い=白っぽい(乳白色)になるという考えである。 またhaynaldianumのアルバ(album)個体を片親とした場合、相手が何であれ共通色がないため白っぽい(乳白色・薄ピンク←delenatii)花が咲くということも重要である。 2.3 haynaldianumとlowii x Polyantha(ポリアンサ)亜属
交配相手が同じPolyantha亜属ならばお互いの特徴が良くでるのであるが、lowiiは色が濃くdarkな雰囲気になるのに対してhaynaldianumは派手というかcolorful(グリーン・黄色等)な感じになる。またhaynaldianumを交配に使うとドーサルに点がでることも大きな特徴である。 2.4 haynaldianumとlowii x Cochlopetalum(コクロペタラム)亜属
交配相手がCochlopetalumの場合交配登録は全てあるのだが、スライド写真を見る限りでは良い結果がでていない。 2.5 haynaldianumとlowii x Sigmatopetalum(シグマトペタラム)亜属
交配相手がSigmatopetalum亜属の場合、登録も少なく実際に花を見る機会も少ないので出品されたときは是非撮影ください。 2.6 haynaldianumとlowii x Paphiopedilum(パフィオペディラム)亜属
交配相手がPaphiopedilim亜属ではわずかにfairrieanumとspicerianumの写真が紹介された。花を見る機会が少ないので同様に出品されたときは貴重ですので撮影ください。 |
展示されたものの中からテーマに関したものを集めてみました。 |
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Henrietta
Fujiwara (primulinum x haynaldianum) |
出品者 : 小林 良一 | |
NS=12.8x8.5 | |
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lowii |
出品者 : 小林 良一 | |
完全に開花していないため計測不能 | |
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lowii |
出品者 : 大床 豊治 | |
NS=15.0x9.5 | |
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Toni
Semple (lowii x haynaldianum) |
出品者 : 亀井 隆 | |
NS=10.0x8.0 |
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