CP苗の栽培

1)育苗

 小苗を健全な状態で育てるためには、経験的に、比較的高い温度(18〜20度)と高湿度(70%くらい)で栽培するのが好ましい。しかし、このよう環境を長期間維持することは困難であるし、病気に感染しやすい。常に扇風機などで温室内の空気を動かすなど、通風を良くすることに心がけよう。
 1ヶ月に1度くらい、規定希釈の2〜4倍に希釈した薬剤、マンゼブ・ダイセン剤(ダイセンなど)やベノミル剤(ベンレートなど)を散布して消毒するとよい。CPにしてから、1ケ月ほど経過したら、日照を少し強く(50〜60%)して、健康的に生育するように心がける。
 温度を高く保っていると、小苗は真冬でも成長を続ける。成長には、適当な肥料が必要であることから、生長している苗には冬でも肥料を与える。特に、ミックスコンポストを用いるときには、コンポストは養分を含まないばかりか肥料成分を自ら吸収するので、頻繁に肥料を与えるようにする。肥料の濃度を調節する必要があるので、固形肥料より液体肥料を用い、規定よりさらに薄く(4000〜5000倍)したものを1〜2週間に1度くらい与えるとよい。8000〜10000倍に希釈したものを、水代わりに与えてもよい。成長を促す肥料は窒素分の多いもの(N:P:K=10:10:25)を用いる。

2)苗の単鉢への移植と栽培

 初心者は、小苗が少し大きくなったら直ぐにCPをほぐして単鉢に上げようとする傾向がある。必ずしも間違いではないが、自信のあるベテランでないかぎり、鉢がいかにも小さく感じるまでCPのまま育てることをお勧めする。苗のリーフスパンが10cm程度になったら、いよいよ植えかえである。苗の根を慎重にほぐして、単鉢(2.5寸鉢)に植え替える。苗をまとめて植えた場合でも、この時期になると根は完全に生え変わり、新しい根が長く伸びているであろう。かつて、ほぐせなかった根は腐って黒くなり、新しい根は容易にほぐせる状態にある。いずれにせよ、根を傷めないように、十分に配慮すること。まとめて植えた苗の場合、生育が遅れた小さな苗が含まれていることが多い。この場合には、小さな苗をあつめて、再びCPを作り直すようにする。移植や鉢増しは、決して焦らないことである。

(右)苗は単鉢に植え替えたくなる大きさまで生長したが、もう少し待とう。
(左)これくらい大きくなったら、単鉢に植え替えると良い。ちょっと、待ちすぎたかなと思われるくらいがちょうどよい。

単鉢に植え替えられた苗は、基本的には親株や生育株と同じように扱うことになる。移植後1ケ月はやや強めに遮光(70%くらい)された場所におき、注意深く観察しながら栽培する。コンポストを決して乾かさないようにするが、水が多すぎないように注意する。

3)苗の病障害の予防と治療

 小苗はデリケートで、病気にかかりやすい。特に、CP植えにした直後(2週間前後)に、小苗が次々と腐敗するように死滅していく姿を見て、がっかりしたり、自信をなくすことがよくある。このような病気のほとんどは、ブラックスポットと思われるが、病気の予防と治療についての記事は他にまとめてあるので、それを参照していただきたい。小苗は、成長した株と違って、病気を治療することはほとんど不可能である。従って、病気にならないように予防することが不可欠で、いつも気を配って成長を見続けてやることが大切である。次に、よく見かける2つの典型的な病気を紹介しておく。先に述べたように、両者については、病気の治療と予防編に詳しく述べているので、是非参照していただきたい。

CP苗の葉先が枯れて行く病気である。もともと、フラスコ苗の先端が枯れているように見える場合があるが、これは病気ではない。フラスコ内は無菌であるはずで、先端が褐色になるのは生理的な結果であろう。しかし問題は、このような苗をフラスコの外に出すと、その褐色の部分に病原体が感染することである。従って、病原体が感染する前に、即ち、フラスコから出して直ぐに、その部分を切り取り、傷口を消毒することが望まれる。

事実、先端が褐色の葉を放置しておくと、褐色の部分は次第に基部に達し、小苗全体が腐敗する病気になる。
元気であった苗が、突然、褐色や黒褐色に変色して、腐敗していく病気である。カビの一種が原因となる黒色斑点病(ブラック・スポット)と考えられるが、これに感染した小苗を助けることは困難である。成長した株と同様にして、処理を試みるのはよいが、期待は薄い。この病気に対しては、感染後の治療よりも、感染しないように予防に心がける。もし、感染したなら、他の苗に感染しないように、早急に処置をすることを勧める。

生理的な理由により、フラスコ苗の先端が傷んでいることがある。フラスコ内は無菌状態であるため、病原体に犯されてはいないが、フラスコから出した後で感染することが考えられる。そこで、このような傷みを見つけたら、直ぐに処置をすることを勧める。

傷部(患部)を2cmくらいの余裕をもって、切り取る。

切り口には、ベンレートやマンネブ・ダイセンのような殺菌剤を、ペースト状に溶いた液を塗り付ける。詳しくは、病気の治療(別編)を参照。

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