洋ラン栽培におけるセラミックスを用いた遠赤外線の利用

全日本蘭協会   田中 利典

 (自治医科大学ウイルス学教室)

この原稿は、1990、及び、1991年度に発刊された全日本蘭協会(AJOS)の年会報(vol.29、30)に掲載したものをまとめ、さらに、若干の手直しを加えたものです。

目  次

はじめに

遠赤外線の一般的利用 (このページ)

洋ランの栽培におけるセラミックスを用いた遠赤外線の利用

実際の利用法と結果
(1)遠赤外線を直接照射する方法

(2)セラミックスで処理した水の利用

     水耕栽培(宇都宮生産業者)、 
     熊本の蘭友 

(3)セラミックスをコンポストに利用

(4)セラミックスを含んだ鉢の利用 
       日本パフィオペディルム研究会でセラッミックス鉢の作製  021209
       リサイクルプラスチックを利用して 
021213

付録:セラミックスを利用した熱帯魚(主に海水魚)の飼育へリンク

1. はじめに

今日からあなたもセラミックス党? 魔法の光!! 遠赤外線

 今から4・5年前になるでしょうか。遠赤外線を応用した商品が巷に氾濫していました。遠赤外線コーヒー、遠赤外線を放射するコタツや布団・・・。いやぁー、すごかったですねぇー。何から何 まで遠赤外線というぐらいブームになっていたようです。そこで、このブームに ちゃっかりと便乗したというわけではありませんが、遠赤外線が植物、もちろん 我らが愛する洋ランの生育に効果があるとしたら、「ブームなんか嫌い!」とか なんとかは言っておられませんよね。では、今回は遠赤外線の洋ランの生育につ いての情報を提供したいと思います。
 まず、遠赤外線の基礎知識をお話します。太陽光線を頭に浮かべてください。 その中で、我々の目に見える光を可視光線と呼んでいますが、その可視光線より 波長の短いものを紫外線、そして長いものを赤外線と呼んでいます。紫外線は皆 さんのお肌の敵ですよね。それは同時に、洋ランを含む植物の敵でもあります。 皆さんのお肌と同様に植物の葉に日焼けをおこします。この様に紫外線は波長が 短くて様々な物質に吸収され、そのエネルギーが物質の化学変化を容易におこす ので化学線とも呼ばれています。どちらかといえば我々の一般的な生活の中では利用しにくい光線です。一方、赤 外線といえば昔から我々の生活の中に広く利用されていますね。おもに熱源として利 用されており、熱線とも呼ばれています。しかし、いままで利用されていた赤外線というのは可視光線のすぐ側にある、赤外線の中でもいわば波長の短い赤外線のことで、ここで話題にする遠赤外線と言うのはさらに波長の長い赤外線をいうのです。今までの赤外線は、この遠赤外線に対して近赤外線と呼んでいます。従 って、最近ブームの遠赤外線の応用は、赤外線のうち波長の長い部分の有用性が認識されるようになって、様々な利用化が進んでいることになるわけです。どうで す?だいぶ賢くなったでしょう。最後まで読むともっと賢くなれますので、ここ でこのページを閉じたり、他のページに浮気しないように・・・。頑張って!!

次に、その特徴はと言いますと、
(1)当然、光として目に見えません。
(2)光の性質である直進性、屈折性、反射性等を持っています。ただ、波長が長いために反射性には優れており、直接光源に面していなくてもその光は到達することになります。すなわち、光源の陰でも遠赤外線は飛んでくるわけです。
(3)波長のあった物質に吸収されるとエネルギーを与えてその物質(分子)を共振させたり共鳴させたりし、その分子からは逆に熱が放出(自己発熱作用)されます。
 実際には遠赤外線を放射させるのに、常温あるいは加熱により遠赤外線を効率よく放射するセラミックスが利用されています。では、この遠赤外線を利用して何が求められるか、どんな製品が作られているか、いや洋ランの栽培に利用できるものは何かということになりますが・・。

セラミックスの利用へつづく(ここをクリック)