ブラキペタラムの大株作りの実際

A: ブラキペタラムの植え替え

 ブラキペタラムの大株を作るには、まず植え替えすることから始まります。先程述べましたように、大株作りの原則は植え替えないことです。他のランですと、株が大きくなるにつれて鉢増しをしていくわけですが、ブラキペタラムの場合は何年も先に大株になる姿を想定して、はじめから大きめの鉢に植え替えます。

1)プラ鉢の利用(私の個人的な好みです)

 写真のプラ鉢は、私が推薦する大株作りに適した鉢です。特に専用の特殊なものではなく、一般の草花やシダなどが植えられているどこにでもある市販品です。普通、大きいもの(右、直径18.5cm)と小さいもの(左、直径13.5cm)がよく使われています。どちらを使っても良いですが、植える種の基本的な株の大きさや、生育の早さを考えて選択します。私は、デレナティーやベラチュラムには大型のものを好んで持ちます。この鉢の良いところは、鉢の側面のカーブが根の伸長を妨げないと考えられることと、水が停滞しにくい構造であることです。特に後者は有効で、ブラキペタラムの栽培に重要な水管理に役立ちます。

お勧めするのは、ホームセンターなどで市販されている普通ののプラ鉢です。右は大きいもので、直径18.5cm、左は小さいもので、直径13.5cmのものです。

2)植え替え(コンポストを含めて)

  ここでは、ブラキペタラムの原種ではありませんが、サイキの植え替えを紹介しましょう。この株はしっかりと生育している2芽の株で、5cm鉢にクリプトモスで植えられています。この株を13.5cmのプラ鉢にミックスコンポストで植え替えます。

(1)まず、鉢底にセラトンの大粒(サイズL)を薄く敷き詰めます。セラトンはセラミックス系の石材で、遠赤外線による水の品質保持に働くばかりでなく、吸着剤としての効果もある有効な資材で、私はこれが無くなったらどうしようと不安になるくらい愛用しています。

(2)次に、セラトンのうえに適切な割合で混合したミックスコンポストを浅く敷きます。このときの、ミックスコンポストに用いる資材の大きさは、今植え替える株の大きさに対応したものより一回りは大きいものを選んでください。

また、ミックスコンポスの基本的な混合の割合は栽培編に紹介していますので参照してください。ただし、これから述べますが、ブラキペタラムの種によりこの割合を若干変更することをお勧めします。基本的には、栽培する人の水やりの習慣に大きく依存するので、自分専用の混合を以下のポイントを考慮しながら決めて下さい。
 ブラキペタラムには分布のうえで、大きく2つの異なった環境に分けることができます。一つのグループはマレー半島の中央部に分布し、石灰岩に張り付くようにして生育しているグループです。ニビウム、アントン、ゴデフロィエ、リューコキラムなどがこれに当たります。比較的乾燥の状態を好み、高温で栽培するのが基本です。一方、ベラチュラムやコンカラーのような内陸に分布するものは腐葉土層が厚いところに生育しており、低温に対して強く水も好みます。従って、前者のコンポストには木質材を少な目にして、石材を大きめにし、特に水はけをよくします。一方、後者では、水保持をよくするために木質材を多めにします。

注意:私は、ブラキペタラムの生育地に共通し、よく話題になる石灰岩(ドロマイト)をコンポストに全く利用してません。
確かに多くのパフィオはドロマイト(石灰質)の山に分布しており、多くのパフィオ愛好者はこれらが何か栽培のキーポイントとなっているような気がして色々と試してきました。結果について色々と語られることがありますが、コンポストに石灰質を含ませても、顕著な差を認めにくいと思われます。というのも、パフィオの生育が非常に遅いことや、環境の変化に対して反応が明確に現れるのに時間がかかるのも理由の一つですが、一般のの栽培では、それ以上に栽培に直接関わる問題が多いと思われます。たとえば、コンポストの主成分や水やり、風通しや太陽光の強さなどです。これらは、ちょっとした失敗で根腐れを起こしたりします。したがって、マイナーな点とらわれずに、原則的な栽培に力を入れることをおすすめします。現地の土のpHを測定したデーターを見たことがありませんので確かのことは言えませんが、私は土は弱酸性ではないかと思っています。石灰岩はほとんど水に溶けませんので、石灰質が本当にどの程度影響を与えているかは解りません。でも、確かに石灰岩の上に生えているのですから、何か良いことががあることに違いないでしょう。しかし、それがpHなのか水に極微少に溶けているCaの影響かも解りません。理屈では、石灰岩は空から落ちてくる間に空気中の二酸化炭素を吸収して弱酸性となった雨水により溶かされると考えられますが、これがどの程度なのか、そして、どの程度影響があるか不明です。私は、溶けやすい方がよいと考えて、USAのドラッグストアーで購入したカキ殻粉末のタブレットを用いたこともあります。私自信も、いろいろな材料を用いてあれこれと試みたのです。私はここで、石灰質の影響について否定しているのではありません。先ほども申し上げたように、何かあるはずです。しかし、我々の栽培でこれが大きく影響を与えるような状況を確認できないのです。それ以上に大きな問題がたくさんあるからだと思います。理想的な、素晴らしい栽培をされる方でしたら、石灰質の影響が明確に見られるかもしれません。そのような栽培が出来たらいいといつも思っています。それから、ブラキの中では言われるとおり、品種により栽培方法は大きく異なります。最大の問題は、無限の自然環境の中で生育している株を我々は小さな鉢の中に閉じこめて栽培していることです。そのために、根に直接影響を与えるコンポストの成分や水の含み具合、そして、室温の影響をほとんど直接受けることなど、大きな栽培要因として解決すべき問題が山積みであることを忘れないようにしましょう。

(3)鉢から取り出した株をそのまま(使用済みのコンポストを崩さないように)、ミックスコンポストの上にそっと置きます。このとき、芽を痛めないように細心の注意を払ってください。

かつてのクリプトモスは痛んでクズのように細かくぼろぼろになっていますが、shんめが動いているのがよくわかります。もう少し植え替えが遅れていたら、この根は腐って、株の生育は少なくとも1年くらいは遅れることになっていたでしょう。

(4)根を傷めないように、周りにミックスコンポストをまんべんなく入れていきます。終わったら鉢の下からコンポストの上部まで水につけてコンポストを濡らし、落ち着かせます。

(5)植え替えを終了した株は、やや弱めの光の元で数ヶ月ゆっくりと育ててやります。ゆっくりというのは、特に意味のない言葉かもしれませんが、いつも目を離さずに特に注意を払って異常がない状態を保ってやるということです。株がダニやカイガラムシに犯されている場合には、植え替え直後に腐敗病が現れることがあります。植え替えを行う予定の株は、早めに病害虫に対する対策を立てておくのが賢明でしょう。また、植え替えてから気がついた場合には、手遅れかもしれませんが、殺虫剤と殺菌剤を混合して噴霧します。

大株作りの方法(2)へつづく