AJOS 2016年7月例会から
清水 柾孝 Masataka Shimizu
 真夏に開花するランは、日本の冬や春の時期ほど多くはありません。そのため、7月頃からは栽培に集中する時期になりますので例会に出品されるランも少なくなってきます。そんな中でも夏に開花するランは個性豊かな花を見ることができます。今回も特徴のあるランが多く見られましたのでご紹介します。
 写真1のシクノチェスはこの夏時期に開花するのが多い属で、中でもこの個体は大きな花で非常にボリュームの良い咲き加減でした。これだけ多く花着きはこの種としても素晴らしいと思います。
 写真2のエピデンドラムは、透明感のあるグリーン色で一見目立ちにくいですが、出品株はとても綺麗に栽培された大株で360℃万遍なく開花されていました。こちらも栽培技術の高さがうかがえます。写真3の種類はブラジルやガイアナの低地に自生する着生ラン。ドーサルやペタルの模様は個体差があるようです。似ている花でnovaesiiがありますが、区別がつきにくいので判別が難しいです。
写真1
Cyc. loddigesii 'Hirashima' 広瀬 紀江



写真2
Epi. rousseauae 広瀬 紀江

写真3
Scuticaria hadwenii 斉藤 正博


 シルトキラム属は黄褐色の花のmacranthumが有名ですが、長い間ランを栽培している方でも目にすることは余り無いのではないかと思います。株自体が大型であり、花茎が大変長く2メートル以上伸びるため、小さな温室では管理が大変なこと、更に夏の暑さに弱いため、山上げや冷房などの特別な配慮が必要なため、栽培している方が少ないのがその理由だと思われます。
 今回のleopoldianumの花を私は初めて見ました。コロンビアやペルーの標高1300〜1400m地帯に自生する高山性のランです。色合いが淡いアメジスト色でリップの色が強調されています。花茎も2m以上伸びて異様な雰囲気を出しながらも、涼しさも感じるような美しい色合いで多くの会員が魅了されていたと思います。写真6が株の様子ですが、オンシジウムの近縁種のためリードはドンドン立ち上がっていきます。そのため根がむき出しな状態になり、この根を傷めないように管理するのも大切なことだと思います。
写真4
Cyrtochilum(Cyr.) leopoldianum 斉藤 正博



写真5
写真6
 warscewiczii f. coeruleaは'Ituango'や 'Floresta' が有名個体ですが、写真7の個体はあまり出回っていない個体かと思います。花容全体にフラットになってリップの黄目がはっきり出て目立つ花でした。この時期の代表的なカトレアがwarscewicziiだと思います。
写真8のstapelioidesは、リップの色合いに個体差があります。この個体のようにリップが黒々として大きな花は、優秀な個体とされ目立つ個体だと思います。増えやすいので更に大株になって咲いたところを見られるのが楽しみです。
 写真9はイエロータイプの個体で、黄色も抜けることなく濃い発色をしておりました。日本でも愛好家が多く、シブリングなどの育種によって、このような綺麗な発色のイエロータイプが見られるようになったと思います。
写真7
C.warscewiczii f. coerulea 'Gigi' 伊藤 彬



写真8
Prom. stapelioides 'M#1' 上野 幹雄

写真9
Paph. wenshanense 高島 祥浩

 写真10のsukhakuliiは東京オーキットナーセリーさんの実生から出た個体だと思います。ペタルの斑点が増え密集することで、グリーンの色素よりも褐色の色素がかなり強調されています。ここまでくるとペタルが全褐色になるのもそう遠くはないのかと思います。正に育種の賜物です。
写真11を出品された菊池さんは会報55号に「Paraphalaenopsisの栽培」を記載していただいてるほどの栽培が上手な方です。このlaycockiiはピンクの発色が良く、透き通ったピンクの色合いが非常に美しくエレガントでした!審査員の皆さんも魅了され見事認定審査入賞となりました。
 写真12のphalaenopsisは非常に珍しい花色が黄色味を帯びた個体です。通常は茶褐色の花です。この色彩は世界的に見ても稀な色彩で、かなり注目度の高い個体だと思われます。良く咲いて良く増えるというのも有り難い利点です。今後も大切に育ててほしいです。
写真10
Paph. sukhakulii 澤井 眞史

写真11
Paraphalaenopsis laycockii 'Shuu'
菊地 秀樹

写真12
Bulb. phalaenopsis 'Tsukuba' 伊東 忠夫
JC・CHM/JOGA、CBM/AJOS