(2)ハダニの発生と被害の様相

。.ハダニの発生と被害の様相
 はじめ葉の主脈に沿って淡緑色に退色します。拡大すると不規則、線状に葉緑が抜け被害がすすむとさらに葉全体が白っぽく退色します。寄生範囲は広く雑草、花卉、野菜、果樹など広範囲に及びます。
不適切な温度管理、根ぐされ、給水不足などが原因で衰弱した特定の株に被害が集中する場合もしばしば見られ、その後、次第に温室内全体に拡散してゆきます。
被害株は生育が衰える一方、葉や花にカスリ状の小斑点を生じ変色するので観賞価値を著しく損ないます。花が奇形化する原因はカイガラムシだけでなく、ハダニが原因の場合も多く見られます。


ハダニによる被害葉
(茶)
「. 防除時期と殺ダニ剤使用に当たっての注意点
 早期発見、早期防除が鉄則です。ハダニは下葉の葉裏にいることが多く、発見が遅れると防除が困難です。早期発見に努め寄生密度の低い間に薬剤防除します。
1葉当たり成虫が1〜5頭の発生初期に散布して下さい。かけむらの無いよう丁寧に散布することは言うまでもありません。多発した場合は温室内の下草や器具類にも寄生、付着していますので散布が必要です。温室内では高温のため周年多発生することが多く、冬季間も必要に応じて防除を行います。特に開花前の蕾が小さい頃に株の点検を行い、吸汁加害による花の奇形化を防ぎます。いずれの薬剤も連続使用によって抵抗性を発達させやすいので、連続散布は避け年一回使用とし、作用点の異なる他の殺ダニ剤と組み合わせて輪番で使用する必要があります。卵、幼虫、成虫の分布状況を的確に把握し、効果的な薬剤を選択します。散布後は効果を確認し必要であれば追加散布を実施します。勝手な判断で指定濃度以下で用いたり、散布量を少なくすると効果は期待できません。散布量は葉の全面がしっとり濡れる程度が適量で、これより少ないと効果は低く、薬液が滴下するのは過剰です。乳剤、EW剤以外のFL(フロアブル)剤、水和剤を使用する場合は必ず展着剤リノーや新グラミンなどを添加してください。アブラムシ防除に殺ダニ効果のない合成ピレスロイド剤(アグロスリン、アディオン)などを使用するとハダニを増殖させることがあります。魚毒性、蚕毒性の強い薬剤が多いので、注意書きをよく読み河川への流入を避け、桑園への飛散防止に留意してください。眼や皮膚に刺激性のある薬剤が多いので取り扱いに注意する必要があります。
」.殺ダニ剤の分類と特性
表1.殺ダニ剤の系統と特性

系 統

薬 剤 名

効 果





参   考



有機塩素系 ケルセン
アカール
エイカロール







紫外線で分解容易、ガラス室専用

亜硫酸エステル系 オマイト

×
有機スズ系 オサダン

×

×

抗生物質系 コロマイト

×

産卵抑制効果により残効性大
多剤混用薬害、温室内使用不可
チアゾリル尿素系 ニッソラン

×

×

合成ピレスロイド マブリック
ロディー
テルスター







ビフェナゼート剤 マイトコーネFL

×

ピラゾール系 サンマイトFL
(ピリダペン)

ピラニカEW
(テブフェンピラト)

温度による影響を受けにくい
ダニトロンFL
(フェンピロキシメート)

高温で効果大
クロルフェナピル コテツFL


注)FL= Flowable. EW= Emulsion Oil in Water.
2 主な殺ダニ剤のグループと作用点

系 統

薬 剤 名

作 用 点
有機スズ系 コロマト
マイトサイジン
細胞呼吸ATP合成酵素阻害
抗生物質系 コロマト
マイトサイジン
神経シナプスGABAレセプター
アゴニスト
ビフェナゼート剤 マイトコーネ 神経シナプス?
ピラゾール系 サンマイト
ダニトロン
ピラニカ
細胞呼吸電子伝達系サイト汨j害
アモトラズ剤 ダニカット 神経シナプスオクトバミン・レセプタ阻害
、. 薬剤抵抗性
薬剤抵抗性とは薬剤の使用(淘汰圧)に屈しない強い個体が生き残り、その性質が後代に遺伝してゆき、結果的に集団全体が耐性を獲得する現象です。
 ベンレート、トップジンMなどの殺菌剤に対するアルタナリア菌、有機りん剤に対するアブラムシの抵抗性の獲得が農業では問題になっています。ハダニは特に薬剤耐性を獲得しやすく、殺ダニ剤の使用に当たっては使用回数の制限、ローテーションの遵守などが必要です。すでに果樹、野菜関係では場所によって、ピラニカ水和剤に対する抵抗性ナミハダニ、カンザワハダニ、ミカンハダニが、またダニトロン・フロアブルやオサダンに対する抵抗性カンザワハダニが出現し防除効果が著しく低下しています。
1、交差抵抗性

  ある薬剤に抵抗性が発達した場合、それまで全く使用経験の無い同じ作用点(同系統)の薬剤に対しても抵抗性を示す現象を交差抵抗性と呼んでいます。

抵抗性の発達を避けるには、同一、あるいは同系統の殺ダニ剤を年1回以上使用しないこと、また違う作用点の殺ダニ剤を輪番使用するのが大切です。散布にあたっては適正濃度、散布量を厳しく守る必要があります。

複合抵抗性

作用点が異なっても、数種の薬剤を混合して何度も用いると、一度に多種の薬剤に抵抗性を発達させ、どの薬剤も使えなくなる恐れがあります。これを複合抵抗性と呼んでいます。

(3)主な殺ダニ剤とその性質へつづく