パービセパルムの仲間と
その栽培(その3)

マリポエンセ

 マリポエンセは1947年に発見された記録があるが、1984年にS.C.Chen
とTsiにより正式に記載報告された。マリポエンセは雲南省のGuizhou Plateau
の南端、MalipoやHwang Jinの近郊で海抜1300〜1600メートルのsan Kauと呼ばれる小山が乱立する中、ライムストーンのカケラからなるようなやや
背の低い小山に生育している。San Kouよりも背が低いので風がやや弱いことから潅木やササが生い茂っている。マリポエンセは東向きのベンチ状に張り出したやや平坦な所で、ライムストーンの割れ目やくぼみなどのコケが生えた堆積した腐葉土に根を下ろしている。この割れ目は夏のモンスーンがもたらす雨の通りとなる。上部は潅木や笹に覆われ、比較的強い日陰となる。朝日は直接当たることもあり、回りのライムストーンの反射光により明るい。3月になると、南あるいは南東から多湿のモンスーンが吹き始め、天候は崩れて大雨を降らせる。夏になると天候は回復するが夕立が多い。晴れた日の日中の最高温度は30度C、夜の最低温度は20〜25度となる。一方、10月の下旬になると北西のモンスーンが吹き始め、天候は安定し晴天が続く。標高が高いので、晴れると気温は比較的高くなり、冬の晴天の最高温度は70どFとなるが、夜になると気温は下がり、最低温度は5度くらいまで落ちる。ほとんど雨は降らないので、マリポエンセは腐葉土の湿り気のみで水分を補給している。12月から4月に開花する。
カンタン栽培メモ
 水を好む品種であるがやりすぎは禁物。夏の生育期には水分を十部に与えるこ
とが大切である。冬はわずかに湿るくらいでよい。日陰を好むが、東向きの朝日
を好み、午後は光が当たらないことが好ましい。水苔でもよいが、木質部を多め
(50%くらい)にしたミックスコンポストが無難である。
冬の最低温度は12
〜15度。くらい。冬には株を休ませることに心がける。花芽が見え始めてか
ら、開花までに3ケ月程要するので、この期間に株の移動など環境を大きく変え
ると花芽がシケルことがある。気温や日照の大きな変化を含めて十分に注意を払
い、環境が大きく変化しないように心がける。

マリポエンセはクリプトモスを好まないようで、石植がよいと思われる。生育期には水を十分にやり、冬は水を少な目にするのが栽培のコツ。


エマーソニー

 エマーソニーは1986年に、クーポウィッツ(H.Koopawitz)とクリブ
(P.Cribb)により報告された中国・雲南産のパービセパルム亜属に属する新し
いパフィオペディルムの一つである。エマーソニーは雲南省と広西自治区との境
界あたり、雲貴高原にそって比較的広く分布している。標高は600メートルく
らい。大きな川の流れに沿ってライムストーンの150メートルほどの高さの山
が連なって峡谷を形作っている。エマーソニーは峡谷に崖のようにそそり立つこ
れらの山の中腹あたり、山頂からの水の流れが溜るようなベンチ状の所によくみ
られる。流れはライムストーンの他、砂や腐葉土を流すため、このようなところ
は泥が溜ったようになっている。泥の塊の上には苔がはえ、エマーソニーはこの
苔の上に生育していることが多い。水の流れに沿っているので決して乾燥するこ
とはない。根は苔を通り抜け、泥の中まで伸びている。生育しているのは山の南
側斜面であるが、エマーソニーは決って北西に向かった面に生育し、朝日を好
む。朝日は直接当たることもあるし、わずかな影になることもある。日中は、潅
木やササ、シダなどの日陰になり、決して直射光を受けることはない。しかし、
ライムストーンの反射により、比較的明るいことは同地域に分布する他のパービ
セパルムの原種と同じである。
 この地域は5月から10月が雨期となる。11月から翌年の2月までは乾期と
なり、乾燥した晴天が続く。この時期の昼間の最高温度は22〜25度、夜の最
低温度は5度となる。1月には特に冷たい北のモンスーンが吹き付ける。このモ
ンスーンが春の開花(4月〜5月)に必要なホルモンの分泌を促すと言われてい
る。2月〜3月になると天候は大きく変化し始める。湿気を含んだ南西からのモ
ンスーンが吹き始め、朝夕には霧が立ちこめ、霧雨や小雨が降るようになる。こ
の時期の昼間の最高温度は14〜16度、夜の最低温度は8度くらいになる。夏
になると土砂降り雨が降るようになるが、晴れた日の日中の最高温度は28度、
最低温度は22度くらいである。
 分布の違いにより、fowlieは3つの変種を報告している。
(1) Paph. emersonii var. kwang-nanensis
雲南省の南西端にあるKwang Nan近郊に分布する。大型で、丸くて広
いペタルを展開することから観賞価値が最も高い変種である。ペタル基部に見ら
れる赤紫色のにじみは最も明確で、スタミノードに見られる同色のスジも明確で
ある。
(2) Paph. emersonii var. guangxiensis
 Guangxiの北西部、雲貴高原からやや西部に分布する。ペタルは細く、全体的に明るい感じの色彩を示す。ペタル基部の赤紫色は上記変種とは違って、細点となって現れている。スタミノードの赤紫色も淡く、網状にいる。
(3) Paph. emersonii var. angustipetalum
 Yun Kai dah sanの西、Yang chun近くの広東の西に分布する。ペタルが反り、基部に赤紫色がほとんど見られない変種である。
カンタン栽培メモ
 きわめて水を好む品種なので、決してコンポストを乾かさないようにする。し
かし、水はけを良くして古い水が停滞しないように心がける。日陰を好むが、朝
日は十分にあてた方がよいようだ。水苔植えでもよいが、木質部を多め(5
0%)くらいにしたミックスコンポストが無難である。
石材のみでも成育はよい
が、コンポストを乾かさないように注意を要する。冬の最低温度は現地では5度
位まで下がるようだが、温室栽培では10度以下にはしない方がよいだろう。最
低温度は12〜15度くらいにすることを勧める。夏は暑がるので50〜70%
の遮光し、できるだけ風通しのよいところで栽培するとよい。肥料を好むが、多
肥栽培は禁物である。春から秋の成育期間(真夏を除く)、規定の4〜5倍に希
釈した液肥を水やり替わりに与えるとよい。

エマーソニーはクリプトモスを好まず、ミックスコンポストで栽培するのが無難であろう。また、アルメニアカムとよく似て水を好むので、冬も水を切らさないようにする。これがなかなか難しいところで、アルメニアカムのところでも紹介したが、私は石植にすると、どうも水を多く与えすぎる傾向になる。左はちょうど良いくらいでしょうか? 右は水のやりすぎでしょうね。でも、一応順調には育っています。でも、花が咲くのは2年に1度でしょうか。

パービセパルムの仲間とその栽培(その4)へつづく

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