パフィオペディルムの新品種(その2)

No.3

Paph.gigantifolium

 新しい品種と言われるこの花は、ストネイとスパルディーの交配(自然交雑種? ・人工交配種?)のようにも見える。セレベス島(スウェラシ島)のサンギーと同じ地域に分布しているというが・・・?。ことの成否と、詳しい分布については、正式の記載を待つことにしよう。インドネシアからの新種には、経験的に疑わしいものが多いので・・・。

 ギガンティフォリウムはインドネシアのスラウェシ(セレベス)島で発見されました。発見者はコロパキング(Kolopaking)氏の親戚に当たるアユブ・パルナータ(Ayub Parnata)氏で、彼はその品種にPaph. Ayubiiと名付けて欲しかったそうです。ギガンティフォリウムは標高0〜500メートルという極めて低い所に分布しています。川に沿った非常に湿度の高いところを好んでいるようです。また、同じような環境の所ならば、かなり広い範囲に見られますが、採集はとても難しいところだそうです。

 葉はとても大きく、現存するパフィオでは最も大きな葉を持つ品種でしょう。また、濃緑でサンデリアナムの葉のように艶があります。全体の感じでは、写真のようにスパルディーによくにた花を咲かせます。おそらくスパルディーと同じ祖先から分離したのではないでしょうか。

Orchidee 30:9-12(1997)に掲載されたギガンティフォリウムの記載論文の翻訳の一部を紹介します。

パフィオペディルム%ギガンティフォーリウム (Paphiopedilum gigantifolium) スラウェシ島(インドネシア)産パフィオペディルム属の新種
Dr. Braem, Guido J., Baker, Margaret L. & Baker, Charles O.
Paphiopedilum gigantifolium Braem, Baker&Baker spec. nov.Paphiopedilum gigantifolium Braem, Baker&Baker [Orchidaceae, Subfam.Cypripediaceae Lindley, Genus Paphiopedilum Pfitzer (nomen conservandum),Subgenus Polyantha (Pfitzer)Brieger, Section Mastigopetalum Hallier](ラン科、アツモリソウ亜科、パフィオペディルム属、ポリアンサ亜属、マスティゴペタルム節)
Paphiopedilum supardii Braem&Lobに似る、相違点は花の構造と独特な蕊柱。基準標本:1997年1月、スラウェシ島、海抜700mで採集。栽培下、1997年4月〜5月に開花。(所蔵 : シュレヒター研究所標本館)

記載:Paphiopedilumgigantifoliumは多年草で、林床の腐葉のなかに生育する。葉は緑一色だが、かすかに斑模様が見られる。長さ60cm、幅8cmで肉質、光沢があり、先端は鈍頭。花茎は長さ60cm、円柱形で直径9mm、緑で密に赤褐色の毛に覆われる。苞葉は大きく、長さ6.5cm、折りたたまれており、両側の幅は2.2cm、緑だが、先端部は密に赤褐色の毛に覆われる。花序は多花性で、基準標本では5花開花。(株ができればもっと着花し、より大きな花が咲くものと思われる。)花は大きく、自然の状態で、花径が6cm×6cm、奥行きが8.5cm。奥行きが特に深いのは側花弁が特にゆったり開いていることと、背萼片が唇弁を覆うように背萼片の角度が唇弁に対し55度しか開いていないためである。背萼片は卵形、先端は鋭先形、長さ4.8cm、幅2.4cm、緑色で基部側1/3から1/2まで明瞭な紫の脈が入る。外面は濃赤褐色の毛で覆われる。合萼片は狭卵形で、先端は鋭先形、長さ4.3cm、幅1.9cm、緑色で基部側約1/3の部分に明瞭な2本の紫の脈

が入る。外面は濃赤褐色の毛で覆われる。側花弁は細長い短剣状、基部近くで幅1.1cm、徐々に細くなり先端は幾分丸い、先端近くで捩れる。唇弁とは55度の角度で広がる。全長は約8cm、黄緑色で多数の不規則な赤褐色の点に覆われる。基部付近の上縁には赤褐色の毛の房が生える。唇弁は長さ5.4cm、折りたたまれた上部は長さ約3cm、基部で幅0.8cm、下部は長さ約2.4cm、幅約2.3cm。黄緑色でポーチ部分は赤褐色。外面は無毛、内面も無毛であるが、底部と背面に小さい突起物がある。折りたたまれた上部の縁は4mm程ポーチ内に伸びている。ポーチの上縁に欠刻はない。しかしポーチの後ろには先端に異常な程の大きな刻み目がある。仮雄蕊は長さ2.6cm、幅1.4cm、奥行き1.2cm。仮雄蕊は長さ約1.7cm、幅1.4cm、奥行き0.6cm。前面はほぼ長方形、上縁は丸く、下縁は広くへこむ。無毛。黄白色で側方に赤褐色を彩る。側部には欠刻があり、褐色の毛に覆われる。

属内多種との区別:Paph. gigantifoliumは属内の他の種と容易に識別される。全体的な特徴からこの種はポリアンサ(Polyantha)亜属、マスティゴペタルム(Mastigopetalum)節に分類される。この節の他の種とは多くの花の形態的特徴により区別される。特に強く反り返った花弁や背萼片の位置、蕊柱や仮雄蕊の形態が顕著に異なる。この新種はPaph.rothschildianumやPaph. supardiiと密接な関連がある。種小名の由来:特別に大きな葉による。
自生地の気候::自生地と環境;スラウェシ島。Paph. gigantifoliumはインドネシア、スラウェシ島の北部(ドンガラの幾らか北東)で発見された。海抜700mの常に流水のあるような陰になった険しい谷間に生育する。気候;インドネシア、スラウェシ、ドンガラの観測所(No.97072)、南緯0.7度、東経119.7度、海抜6mの観測データをもとに700m地点の気温を計算した。(表参照)この地点の最高最低温度は得られなかった。ヨーロッパでの開花期は4月〜5月。

訳 山本伸一(全日本欄協会)

その3(NO.4)につづく