2000年9月のカトレア

このところの長雨続きで、鉢の管理に苦労されている方々も多いことと思います。私はといえば、あいかわらずの放任管理。蘭持ち前の生命力の強さを信じ、管理者は最低限の手助けをするだけです。秋に入っていよいよ成長を開始するコクシネアの仲間があり、シースが展開してバルブの充実を待つ株があり、放任するといっても目配りだけは欠かすことはありません。(9/17)

玄関先の吊り鉢
 カーポート下のメイン置き場の様子です。今年は猛暑に見まわれ、コンクリート床の反射熱を心配しましたが、どの株も夏に負けることなくすくすくと育ってくれました。カーポートは2本の支柱で立っているだけなので、風が素通りできる環境です。気温がぐんぐん上昇しても、渡る風にそよがれて素焼き鉢表面からは常に水分が蒸散します。蒸散熱で株元が冷却されるか、それとも湯だって根腐れを起こすかの分かれ目がズバリ通風なんでしょうね。
 9月に入り、このところの長雨で鉢の渇きも遅くなりました。メイン置き場の潅水サイクルは、毎日帰宅後の夜間を基本としますが、雨の日にうっすらと葉が湿る夜は自然任せです。
今まさに新芽を伸ばしている株には3000倍以上に薄めたハイポネックスを2週間に一度くらい、申し訳程度に与え始めました。
スタンダードタイプの充実
 先月、カーポート下の光線の心配を書きました。今回はその後の経過報告です。右の写真はカーポート下の株ですが、リードバルブはすっかり完成し、新芽を保護する鞘が徐々にはちきれ始めています。今回は紫外線の話題をちょっとだけ書きたいと思います。植物の生育に対する紫外線の必須性が議論されています。さて、私達人間にとって紫外線は必須なのでしょうか?ビタミンDの生合成のための日光浴が提唱された時代もありました。しかし、食糧事情が変わった現代、その必要量の全てを食事で賄えるため、紫外線は ”百害あって一利無し” が定説です。さる著名な学者の言によれば、"赤ん坊の頃から十分なUVケアを施せば、60歳になっても20代の若肌を保てるでしょう" とのこと。理論的にも理に適った説だと思います。オリンピックが開催されているオーストラリアでも " 紫外線対策 " が随分進んでいます。カトレアの葉焼けの主要因も熱線と並んぶ紫外線による組織やDNAの損傷ですから、必須でもほどほどにといったところではないでしょうか。
暑い9月に開いたミニカトレア

 春の植え替えが遅れて、今年はやや遅めに開花した写真右のL.パストラルシンフォニー。Slc.ミリオンキッスとちょうど開花が重なったので、2鉢並べて記念写真を撮りました。パストラルシンフォニーは主に夏咲きですがミリオンキッスは不定期咲き。どちらの花もそれぞれ綺麗ですがあなたはどちらの花がお好みでしょうか?私はちょっと違った観点からミリオンキッスの優秀性を評価しています。写真のミリオンキッスは今春4輪の花を着けた株で、春から伸びた新芽に2つの花が咲いています。四季咲き性で一年に3回でも4回でも開花してくれる、園芸種として普及するためには耐低温性もさることながら、不定期咲きの性質が大切だと思います。一年に2サイクル以上の成熟バルブが立ち上がる成長の早さと、四季に関係無く蕾の上がる寛容性を備え持つ交配種、できませんかね〜。えっ?それじゃカトレアの価値がなくなるって、ですか?
Bc. マーセラコス ’ピンクマーベル’

 この春、開花株のサイズで育て始めたマーセラコス。温室でこの冬を過ごした株だけあって、一足早く蕾が上がりました。来週には開花すると思いますので、咲いた花はまた別の機会にご紹介したいと思います。もしあなたがカトレア栽培を始めてまもなくて、どんなタイプの株を求めようかと迷っていらっしゃったら。少々値段は高くなりますが、強健な大型交配種の開花見込み株を求められることをお勧めします。コマメな手入れに自信がなくても、大きな体に蓄えられたエネルギーと、雑種強勢で備わった生命力で立派に期待に答えてくれると思います。ほとんど放任して過保護にしない私の栽培方法でも大丈夫なのですから。
 参考までに、この春写真の株が到着してから現在に至るまでの栽培管理を簡単に付記します。

植え込み材料 : ビニールポットにバークの組み合わせで到着。植え替えずにそのまま育てています
5〜6月上旬 : 室内窓辺 潅水は3日に1回(夜間) 液肥は2000倍の液肥を2週間に1回。
6月中旬から : 玄関先の半日陰 潅水は夜間に毎日 肥料は2000倍の液肥を週1回(7月中旬まで)。
Sc. フェアリーランドの生育状況

主に冬咲きのフェアリーランド。適当に管理すれば夏越しだってなんのその。ぐんぐん、にょきにょき成長します。真夏に完成したリードバルブにはシースが着き、その下から2つも新芽が立ち上がろうとしています。この鉢は、南側の生垣の支柱に括り付けてあります。南中高度の高い8月までは生垣の遮光効果もいまひとつといった場所なんです。梅雨の雨には当てても良いが、秋の長雨は。。。という話もよく聞きます。でも、それってホントなんでしょうか?少なくとも私のフェアリーランドは雨が大好きなようです。雨よ降れ降れもっと降れ♪といった鼻歌が聞こえてきそうな感じです。秋に入っても新芽を伸ばすフェアリーランドのような種類には、どうやら秋の長雨も恵みの雨なんでしょうね。秋の長雨は。。。という話、どうやら普遍的にどの種にも当てはまることではなさそうです。ただし、風通しだけは十分に気をくばってあげましょう。
無遮光での栽培管理

 庭先に吊るした何鉢かをご紹介します。カトレアの夏栽培に遮光は是非とも欲しいものですよね。蘭栽培の入門書では、何%の遮光率で。。。といった内容が当たり前のように書かれています。蘭栽培をメインにするあなたならそれを実践されるのが最も良い方法だと思います。でも、私のように庭には花壇も作りたいし、と思われる洋蘭ファンにとって遮光ネットは面倒でじゃまな存在なんですよね、たぶん。さて、それではどうするか。私の庭では花壇の真上に2本の杭で竹棒を通し、その上に蘭の鉢を吊っています。下の花は半日陰に適し、十分な水分が必要なインパチエンス。真夏の直射がじりじりとカトレアの葉を焼きますが、インパチエンスが反射熱を吸収し、多量の蒸散熱を地中から奪い去ります。こうすると、直射下でも花壇上空はだいぶマシな環境になっているようです。インパチエンスは毎日がっちりと潅水しないと維持できない植物ですし、地中の水分が不足するれば一気にしおれるので、天然の水分インジケータといったところでしょうか。
ただし、なんでもかんでも無遮光環境に置けるとは思わないほうが良さそうです。晴天の日、室内栽培の株を一気にここに吊るせばどんな株でも一日で葉焼けをおこしてしまいます。曇天の日から徐々に慣らす。これは鉄則です。
(写真中央2鉢は強光線を好むC.インターメディア)