2000年8月のカトレア


玄関先の吊り鉢

 昨年は庭の南側に面した生垣、ベニカナメモチに吊り下げていました。しかし、今年は玄関先のカーポートの下にフェンスを利用してくくりつけています。本当は遮光や潅水などの管理は生垣に吊るした方が楽ですし、蘭の生育環境としても良いのです。しかし、生垣を登るナメクジやワラジムシなどを防ぎきれず、せっかく伸びた新根をかじられ、コンポストにもぐり込んだワラジムシには冬の間中悩まされました。そういう訳でカーポートの端っこが今年の蘭置き場になりました。カーポートの遮光が効いているとはいえ、夏越しの環境としては劣悪だと思います。コンクリートからの反射熱を少しでも和らげようと、毎朝ジャージャーと水を撒きましたが、その効果は如何ほどのものだったでしょうか。また、カーポートを通して蘭に当たる光は自然の太陽光からある波長の光線がカットされた不自然な光です。質的には遮光ネット越しの日光や木漏れ日とは明らかに異なるはず。虫の侵入をある程度我慢して生垣に吊るしたほうが良かったのか、あるいはカーポートの下でも大丈夫なのか、今年は思考錯誤の夏を過ごしています。
 とりあえず、ご覧のように一見元気に成長してはいるのですが。。。。
長期の休暇
 今年は1週間の長期休暇を取りました。普段は勤め先の植え込みに吊り下げている鉢も休暇中は自宅へ持ちかえります。左下からL.パストラルシンフォニー、Lc.ミニパープル ver.セルレア、C.ハワイアンウエディングソング、Slc.ミリオンキッス、Blc.チャングーチャフィンチ、Slc.未登録です。自宅へ持ちかえったとはいえ、3泊4日で旅行へ出かけてしまったのですから、蘭たちにとっては迷惑な話ですよね。とりあえず我流長期不在管理法だけは施しました。4号以上のミディーまたは大型種は、真夏の外栽培でも3日や4日潅水しなくてもそのままで耐えてくれます。2〜3号程度のミニ種は乾燥と高温に弱いものが多いので、北向きの風呂場へ取り込んでおきます。ただそれだけです。
耐乾燥ということならサボテンの次に強いと言われるカトレア。少々のことでは枯れたりはしません。
新バルブにシースが展開したLc.ドラムビート

 ドラムビートのバルブ伸張がほぼ完了し、立派なシースが見えています。あとは十分日光に当ててしっかりとバルブを太らせることで年末には蕾が上がるはずです。ここまで成長した株が開花するためには肥料は全く必要ありませんので、肥料をやるべきかやめるべきか迷ったならばやらない方が無難でしょう。玄人は’カリ分の多い液肥を開花前何日まで与える’とかあるそうですが、そこまで極めたい方向けの処方箋だと思います。
Blc.メモリアンクリスピンのシース

 メモリアンクリスピンもほぼバルブの伸張が完了し、太いシースが着きました。同個体の別鉢が無遮光の庭に吊るされているのですが、そちらも立派なシースを見せています。スペースの問題で、仕方なく無遮光の庭に押し出されてしまったのですが、写真の個体と無遮光環境で育った株とどちらが立派な花を咲かせるのでしょうか。実験のつもりで置き分けたのではありませんが、その結果でカーポートの適否がある程度見分けられるものと思います。
 それにしてもメモリアンクリスピンは強健です。この株は一昨年、ひどい葉焼けでボロボロになったのですが、今年は完全に復活してこの秋には見事に開花してくれるでしょう。
Blc. チアリン ’シンシ’の苗

 あの深紅の花に憧れてそだて始めたチアリンです。この株は我が家に来てかれこれ2年が過ぎると思うのですが、まだまだご覧のような小さい苗です。このチアリン、もしかすると私の栽培環境では開花するまでに仕立てることは出来ないかもしれないと思い始めました。チアリン本来の性質なのか、うちのは夏から秋に新芽を伸ばし始めます。新バルブが十分成長しないうちに冬が来てしまうため、無加温ではそこで新芽の成長が止まり休眠状態へ。というサイクルで一向に株が充実してくれません。かといって、寒さで枯れてしまうほどひ弱でもなさそうです。ご覧のように気温が上がれば青々と元気な様子で、今年も8月から新芽が徐々に伸び始めました。
 無加温でチアリンの栽培をなされている方、あなたの株はどうですか?
深紅の花は低温で鮮やかな赤を発色するという話もよく聞きます。私のところの低温環境は残念ながら問題外ということでしょうか。
Slc. ミリオンキッス

 ミリオンキッスは強くて良く増えおまけに不定期咲き。普通に管理すれば1年に2回の開花が望めます。この株は今年の春先に4輪もの花を咲かせてくれました。4月から伸び出した新バルブが完成すると、その先にはもう既に次の蕾が膨らみ始めています。
 洋蘭から話がそれますが、サントリーが開発したペチュニア’サフィニア’がガーデニングブームの一翼を担った話は有名ですが、なぜそこまで一般家庭に浸透したのか。その答えは、野性種との交雑強勢で良く茂り良く開花し、おまけに耐病性に優れる品種改良の結果、育て難いペチュニアのイメージが一新されたからです。洋蘭栽培は原種ブームのようですが、特殊な保護設備がなくても誰でも簡単に立派な花を咲かせられるカトレアがより多く作出されることを切に望んでおります。カトレア栽培がもっとポピュラーなものとなる喜びと、
原産地原種保護やエネルギー消費節約の面からもそう思うのです。