2000年7月のカトレア

7月もあっという間に中旬です。今年の梅雨はいつもの年より降水量が多く、カトレアの鉢を外に吊ってあるお宅では潅水の手間がいくらか省けたのではないでしょうか。カトレアを長雨にあてるのは良くないと言う話も聞きますが、生育が盛んなこの季節、雨よけせず自然に任せたほうが新根の伸びがよく株が生き生きするように感じます。もうあと10日も経つと、管理が楽だった梅雨も明け、本格的な夏の到来です。皆さんの育てている株は、暑い夏を乗り切る体力が十分ついているでしょうか?もし、まだ室内に置きっぱなしで新芽の伸びも今一つという鉢をお持ちでしたら、本格的な夏が来る前に少しでも外の風と雨と適当な光に当ててあげて下さいね。株の成長が促され、眠っていた新らしい根も活動を始めることでしょう。

Lc.ドラムビートの7月の様子 新芽がグングン伸びるLc.ドラムビート’トライアンフ’

7月に入ると、梅雨の適温高湿度にカトレアの成長が促され、一年で一番成長が盛んになります。無加温栽培では、温室栽培よりほぼ2ヶ月遅れとなりますので、この成長適期を十分利用して出来るだけ大きな新芽を伸ばしてあげることが必要です。まだ部屋の中に置き忘れている鉢をお持ちなら、今からでも風通しの良い外の半日陰に吊るしてあげてください。外に出した株と部屋の中に置きっぱなしにした株では、明らかにその成長に差が出ます。外の新鮮な風を十分にあて、潅水は毎日夕方遅く、頭からシャワーするようにたっぷり与えます。元気な株の中には写真のように、新しい根を盛んに鉢の外へ伸ばすものもあります。このように根が活発に動いているようなら、薄い液肥(2000倍)を1週間に1回水遣り代わりに与えます。でも、この肥料やりは梅雨が明けたら中止したほうが無難です。30℃を超える日本の熱帯夜は、カトレアにとっても辛い季節。根を痛めてしまうことにもなりかねませんから。
Bc.マーセラコス’ピンクマーベル’の様子

このマーセラコスは、通販で今春我が家に着たニューフェイス。温室育ちの大株で、新芽はほぼ展開し、既にシースも見えています。シースが見えているからといって、その中から必ずつぼみが上って来るとは限りません。これから秋までの充実期に、しっかりと管理してバルブを十分太らせないと開花を望むことはできません。適当な太陽光と、たっぷりの水分と、そして風がバルブを太らせます。ここまで成長した新芽にはもう肥料は要りません。開花は秋遅くといったところでしょうか。
Bc.マーセラコス’ピンクマーベル’の様子
ミニ種も順調に新芽を伸ばしています

この2鉢もニューフェイス。右がSlc.レッドマジックで、左がSl.イザベルストーンです。どちらも今春、近所のホームセンターで買い求めました。このサイズで開花株です。順調に育ってくれればこの冬には開花した写真をUPできると思います。
 2〜2.5号鉢のミニ種の多くは、Soph.コクシネアの血を引いていますので猛暑が苦手です。酷暑時の鉢内乾燥は最悪ですので、これからの夏場は朝と夕の1日2回の潅水が必要となります。また、大型のカトレアよりも日光を必要としませんので、木陰などで直射日光は十分遮ってあげてください。よく風の通る樹木に吊る下げることが、一般家庭でこのサイズのカトレアを上手に夏越しさせる王道だと思います。
ミニ種のコルク着け

Soph.アリゾナ X Sl.レッドドール の交配種。この春コルク板に着けてみました。コルク着けは初挑戦だったので、うまく行くかどうか心配しましたが、新しい根もコルクに活着し始め、順調に育っている様子です。潅水は出勤前の早朝と帰宅後の夜間の1日2回、ジョーロでジャージャーやってます。置き場所は、お隣りのお宅との間の明るい日陰で、朝日と11時頃からしばらくの間だけ直射が射す環境に吊るしています。
Soph.アリゾナ交配種のコルク着け
Soph. アリゾナのコルク着け Soph. アリゾナ

このアリゾナは昨年の4月に我が家へやってきました。昨年1年間、2.5号の素焼き鉢にミズゴケの組み合わせで栽培しました。潅水の調節が難しく根を痛めてしまいまったので、今春思いきってコルクに着けてみることにしました。5月、鉢から抜いてみると根がほとんどない最悪の状況でした。それから2ヶ月、6月の十分な降水と新鮮な空気が株に息吹を吹き込んでくれたようです。小さいけれど新芽は順調に展開し、新根もチョロチョロ伸び出しました。アリゾナはコクシネアとブレビペディュンキュラータの交配種。コクシネアは常に根が湿っている状態を好み、ブレビペディュンキュラータは根の乾燥を好みます。中間くらいということで、コルク着けを選択しましたが、これが良かったのかどうか、その答えはクリスマスキャロルが流れる頃になるでしょうか。
Soph. ウッティジアナ(ロゼア)

ウッティジアナがコルク着けに向いていることは、いろいろな情報から確かなようです。蘭展などでもコルクに着けた素晴らしい大株を見かけます。ウッティジアナの自生地はブラジル第2の高峰ピコ・ダ・バンデーラの標高2000mあたり。常緑樹のツルツルとした上皮にぴったりと着生しているそうです。コクシネアのように朝夕発生する霧から十分に水分を補給できる環境とは異なり、乾燥に耐えるサイクルに適応しています。これがコルク着け栽培に向く理由だとか。私の株も新根がコルクに活着しはじめています。
Soph. ウッティジアナ
Sc. ビューフォートの花芽 Sc. ビューフォート

ビューフォート 'クレイズ’ の頭につぼみが見え始めました。ビューフォートは主に冬咲きで、この季節のつぼみは落ちやすいので開花に至るかどうか自信がありません。ビューフォートは何鉢も持っていて、6年ほど栽培していますが、決して強健な種類ではありません。ちょっとしたことで機嫌を損ねて赤ちゃん帰りしてしまいます。今年はいつもの年より潅水回数を殖やして、常に鉢が湿った状態を保つ様にしたところ、新芽新根の成長がすこぶる良いような気がします。写真とは別個体の’エルムウッド’なんか、いつもの年より一回り大きな葉が展開しています。この年末はビューフォートが出窓を綺麗に飾ってくれそうです。