2000年12月のカトレア

12月も既に下旬。こちら千葉県北部でも早朝には霜が降りる本格的な冬に入りました。冬咲き種は秋に充実したバルブに蕾が見え始めたものがあり、春咲き種の中には今まさに新芽の成長期を迎えた株もあります。無加温で厳しい冬を乗りきる術は、出きる限りの保温手だてを工夫する事に尽きると思います。家の中で一番あったかそうな所を選んでコマメに鉢を移動するも良し、発泡スチロールや段ボールの簡易保温ケースを用意するのも一つの手段です。成功のポイントは、途中で挫けてしまって放り出してしまわないことです。地道に継続できなくなると、暖かい環境に慣れた株はてきめんに弱ってしまいます。皆さんの生活環境や生活スタイルに合わせ、継続可能な無理の無い範囲に留めておくことも、場合によっては適当なのかもしれません。たとえ失敗しても栽培意欲さえ失わなければ、とても多くの品種があるカトレアの中には、きっとあなたのスタイルに合った株があるはずです。(12/28)

Sc. ビューフォート ’クレイイアー’

 
11月に蕾が上がってきたことをご紹介したビューフォート。12月下旬に2輪の花が開きました。黄色系ミニカトレアの多くがビューフォートを片親に持つことから、交配親としての優秀性が高く評価されています。交配親としては優秀ですが、性質の気難しさという園芸品種としての改良課題を残した良花です。せっかく上がり始めた蕾を途中で落としてしまわないように、大事に大事に開花を待ちました。私はこの花への思い入れを引きずって大事に育てているのですが、今に至ってはわざわざ本種を選ばずとも、花型や色彩に大差がなくずっと育て易く花つきも良い改良種が流通するようになっております。黄花系ミニの重要な交配親としてブリーダーや趣味家によって今後も栽培しつづけられることと思いますが園芸品種としてはその役割を次の世代に譲った銘花です。
リビングの窓際

 今年の冬はリビングの窓際を占拠することができそうです。昨年までは子供が走り回るリビングに、大切な鉢を並べておくことは、どうなってもかまわないことを意味しておりました。今年は秋口から私の目の届く休日だけ並べ始めてみたところ、子供たちも女房も少しづつその存在を意識してくれるようになったようです。ここに鉢を置けることは、昨年までの完全無加温状態とは雲泥の差があります。完全無加温の2階の出窓は、夜間明け方に10℃を切ることが常でしたので、今年はカトレア達も安心して冬を乗りきる事が出来そうです。
 昼間は暖房を入れませんが、日当たりが良いので真冬でも室温は15℃程度に保たれます。夜間の暖房は12時頃までですが、明け方5時頃には再び暖房が入りますので、底冷えのする寒さに長時間株を曝してしまう心配もほとんど無くなりました。例年なら、今頃になると株の成長は一切ストップするのですが、今年はまだ株に動きが見られます。一番手前の大鉢は、春咲き種のLc.アイレンフィニー。今が新芽の成長真っ盛り。交配改良されたミニカトレアならば、この程度の環境でもしっかりと育ってくれます。
Soph. ウィッチジアナ (ロゼア)
 手のひらサイズのソフロニティスに魅せられて、原種ソフロを日本で栽培する難しさを知りました。かつて十数年前までは、大量のジャングルプランツを輸入していたそうです。しかし国内での栽培技術が未確立であったことから、そのほとんどを枯死させてしまったと類推されます。知らぬ事とはいえ、私もその頃からソフロを手に入れては枯らすことを繰り返していましたので。。。今では栽培技術も確立され、設備さえ整えられれば実生株から優良株を選抜する事も可能となったと聞きます。とはいえ、ソフロの性質が変化して一般家庭での栽培が格段に容易になったわけではありません。当面あれこれ思考錯誤は続きそうです。写真のロゼアは花が6輪とつぼみもまだ残っている見事な大株です。この秋にホームセンターでとても安価に手に入れた一鉢です。栽培が難しいだけに、信じられない破格値で流通させることができるブリーダーにテクニックの差を見せつけられたような思いです。
L. プミラ

 今年もプミラが花を咲かせてくれました。たったの一輪でしたけれど、昨年よりひとまわり大きな立派な花でした。
 ミニ種(Lc.やSl.やSlc.)の多くが本種の血を引いて改良されます。原種ブームの真っ只中、プミラの人気がいまひとつなのは何故なのかな〜と考えます。先日、東京大丸デパートの屋上にある蘭店の温室で、プミラの立派なコルク着け大株を見ることが出来ました。特に夜間の十分な給水を好むと言われる本種も、キメ細かく手をかけてあげられれば、給水と乾燥のサイクルをしっかり操作できるコルク着けが適するのか、と感心した次第です。低温にも強く性質は強健ですが、手を抜くと花が咲かなくなると言われるプミラ。来年は是非とも2輪の花を咲かせてみたいとおもいます。

新芽を割って蕾が見えたSoph.ウィッチジアナ

 ウィッチジアナはやはりコルクとの相性が良いようです。ソフロの中でも比較的高温に耐えると言われる本種ですが、ミズゴケ植えでの管理はやや難しいと感じておりました。春からコルク着けに切り替えたところ、根の伸びは格段に良くなり今シーズンは立派な新芽を2つも吹いています。果たして蕾が入るかどうか、ちょっと自信がなかったのですが、両方とも蕾が顔を出してくれたときの嬉しさと言ったらもう。。。。。本種のコルク着けはソフロがお好きな方々に是非とも一度は試していただきたい育て方だと思います。参考程度に。コルクはあっという間に乾くので、真冬の現在でも出来れば朝と晩、1日2回タップリと水をかけてやっています。
コルク着けの置き場所の工夫

 コルク着けやヘゴ着けが蘭の生理に適していることは広く知られておりますが、家庭での実践となると大きな障壁があります。それは置き場所の問題です。素焼き鉢にミズゴケの組み合わせならコンパクトだし、潅水も容易です。しかし、コルク板となると躊躇される方もいらっしゃるのではないでしょうか。私は、ホームセンターで安売りされている大きなプラスチックの衣装ケースをコルク着け置き場に流用しました。この大きなプラケースって、結構安いんですよね。300円台ですから驚きです。ちょっと気をつければ周りを濡らさずにシリンジできるし、そのまま窓際に移動すれば日光を通してくれるし、夜間にふたを乗せれば簡易保温・保湿ケースです。コルク板だって、針がねで縁に引っ掛ければOKです。如何なもんでしょう?